あの人にインタビュー - 身体学研究者 村川治彦さん

身体学研究者 村川治彦さん

身体学研究者 村川治彦さん

今回は、身体学研究者の村川治彦さんに「気の哲学とスピリチュアリティ」についてお伺いしました。

村川治彦さんプロフィール
Center for East West Dialogue 代表。 東京大学文学部宗教学科卒業後、1986年トランス パーソナル心理学を学ぼうと渡米。学生時代はアジア諸国大好きだったのに、 以来ひたすら太平洋の両岸を往復すること30回を優に越える。現在立命館大 学非常勤講師。Association for Transpersonal Psychology (アメリカトランスパーソナル学会)常任理事。

(2006年12月08日)

 感覚と言えば普通「五感」というように、人間の感覚は視覚・嗅覚・味覚・聴覚・触覚の五つだけだと思いますよね。でも実際には、五感以外にも私たちには様々な感覚があると思いませんか?例えば、おなかが空いている感覚や、嬉しい時や悲しい時に胸がキュンとしていると感覚、あるいは後ろに誰かが立っている感覚やからだを動かしている感覚。そういう感覚は五感のどれにも入りませんよね。普段私たちがこうした感覚を五感と区別するのはこれらが「からだ」の内側に属するもので、世界と関係ない自分だけの感覚のように思っているからです。でも実は、こうした「からだ」の感覚こそ私たちが世界と接している大切な接点なのです。 

 私の場合、トランスパーソナル心理学を学びに渡ったアメリカで、自分がそうしたからだの感覚にとても鈍感になっていることに気づきました。そしてそうした自分のからだの感覚を追求していった時に出会ったのが、「気」というものでした。日本語の中には、気分・元気・天気などざっと思い浮かべてみただけで日常的に「気」に関連した単語が数多くあります。でもそれだけ馴染みのあるはずなのに、実際に気とはどういうものかと尋ねられると、多くの方が戸惑われるのではないでしょうか。

 「気」という言葉はそもそも古代中国人が山に霧や霞がかかっているのを見て、色々と考えを巡らせたところから始まりました。霧はどこからともなく現れ、時間が経てばスーッと消えていきます。実体がないように見えて、空で雲となって雨を降らせたり、畑で露となって食物を育てる力になる。目には見えなくとも確かに力を持ち、生命の大きな源になっている何かがある、と彼らは考えました。そして、その目に見えないけれど確かに力を持っているものを「気」と呼ぶようになったのです。

 さらに彼らは、同じように目に見えなくても大きな力を持つこの何か(=気)こそ宇宙の根源的な働きであり、人間の身体と心もこの同じ気の変化した状態だと考えるようになりました。同じ気が変化しているのだから自然と人間は本来つながったものであり、また気の流れを調整することにより身体と心のあり方を変え自分自身と宇宙のつながりを実感できると考えたのです。 

 中国では3000年以上前から、そうした気の調整法を開発し蓄積してきました。それらは、からだの感覚を手がかりに身体の姿勢や動き呼吸などをコントロールし気を調整しようというものでした。そうした伝統的な気としてのからだの調整法を総称して近年気功という名で呼ぶようになったのです。ですから、人間や宇宙を気の状態や働きで理解している東洋の身体技法は、さまざまな瞑想法や鍼灸、按摩、太極拳から合気道まですべて気功だと言えるのです。

 今日本ではスピリチュアリティという言葉が流行していますが、その言葉が人間と宇宙とのつながりを示すことだとすれば、この気の哲学や気功を通して得られる気の実感こそが、日本人としてのスピリチュアリティにとって大切になってくると思います。

(取材:長束優子)

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