皆さんは三重県の二見という土地をご存知でしょうか?

伊勢に天照大神(あまてらすおおみかみ)をお連れした倭姫命(やまとひめのみこと)があまりの美しさに二度振り返って見たことからその名がついたという伝説が残り、神の存在を知らせるかのごとく澄んだ空気が漂っています。
そんな二見の静かな静かな旅館街に岡田さんが手掛ける藍織成(あいな)はあります。
お隣のおばあさんが軒先を掃く音、誰かが挨拶を交わす声、どこかへ向かう旅人の足音、この街にはたくさんのやさしい音が溢れており、一人でも何かに守られているような感覚に包まれます。

藍織成のコンセプトは日常から自分を切り替え、ホッとする空間を提供すること。昭和初期の旅館をそのまま活かし、かつてたくさんの人々が愛した温かみそのままに、ギャラリーとカフェを展開しています。
そこで岡田さんが手掛けるのは、藍染めを中心とした草木染めの手織り作品。
藍・梅・びわ…自然からいただく一期一会の色を楽しみながら木綿を染め上げ、静かな街の音と繊細な糸の声に耳澄ませゆっくりと手織りで織り上げています。

藍織成でその作品と岡田さんの人柄に触れると、無性におしゃべりをしたくなります。現に藍織成にはそんな常連さんが行ったり来たり。初めて訪れた人も巻き込みながらあたたかな会話を弾ませてゆきます。
その様子を象徴するかのように、藍織成にはさりげなく街の人々が提供してくれた骨董品が並び藍織りの作品と溶け込んでいます。それらが織り成す風景は見たこともないはずなのにどこか懐かしく、遠く離れた街からやって来た人もあたたかく迎え入れてくれるのです。
藍織成に充満するあたたかさは、岡田さんとそこを訪れる人々、自然の力によって生まれてくるようです。

人と自然はこんなにもやさしいものだったのか…。
自然の中で暮らす人として、自然に何かを愛しながら生きよう。
自分の中で芽生えたそんな気持ちに喜びを覚えながら帰る帰り道、そこを後にするとまた行きたくなって少し切ない気分になる。二見、藍織成はそんな場所。遠方からまたふらりと訪れる人が多いのもそのせいでしょうか…
(取材・文:長束優子)














