SQな場所 - 鞍馬から奥の院を経て貴船へ(京都)

鞍馬から奥の院を経て貴船へ(京都)

鞍馬には、仲間達と何度か冬の朝に訪れたことがあります。皆と参道の坂道を登り、本殿にお参りし、昇ってきたばかりの朝陽を浴びたりしてから来た道をまた戻ったものでした。今回はまだ行ったことのない”魔王殿”を目指して、1人での行程です。

バスで鴨川上流の川辺に位置する出町柳駅まで行き、2両編成の小さな叡山電鉄鞍馬線に乗りこみます。修学院、京都精華大といった駅をゴトゴト揺られながら越えていくうちに、電車は深い山あいに入っていきます。新緑や紅葉の季節はさぞ見事なことでしょう。(これらの時期は観光の人々でかなり賑わうようです。) 終点の鞍馬駅を降りて土産物屋さんなどが並ぶ道を行くと、まもなく大きな仁王門に出迎えられます。ここで愛山費を払って先へ進んでいきます。長い道のりのところどころには点々と小さなお堂や幾つもの史跡が続きます。鞍馬寺の始まりは770年と伝えられており、古くは清少納言も枕草子で鞍馬の参道について記しているそうです。鞍馬山には天狗伝説があり、若き日の義経(牛若丸)が彼らから武芸をこの地で学んだともいわれています。義経ゆかりの史跡も数多く見られました。本殿まではひたすら上り坂が続きます。九十九折と呼ばれるこの参道を急がずのんびり登っていきます。(徒歩での登りが困難な人のためにケーブルも通っています。) 

鞍馬寺駅からはだいたい30分ほど、最後の石段を登りきると、広い敷地が広がり、鞍馬寺の本殿が姿を現わしました。薄暗い本殿の中、燈された灯りや外からの自然光で、祭壇の辺りが浮かび上がるように見えています。ここには森羅万象の根源・宇宙エネルギーである「尊天」の働きの象徴として、千手観音・毘沙門天・護法魔王尊が祀られています。この3体は、尊天の働きのあらわれである愛・光・力と水(月)の氣・太陽の氣・地球(大地)の氣をそれぞれの姿で表わしているといいます。770年に鑑禎上人(鑑真和上の高弟)がこの地に毘沙門天を祀ったところからこのお寺の歴史は始まりますが、太古に金星から大地の力・護法魔王尊が天降ったとも伝わっているそうです。現在の形になったのは戦後まもなくのことです。

地下に続く階段を下ると、通路の向こうのしーんとした暗がりの中に、静かに灯がともる空間があります。外の賑わいとはうって変わって、地下のここだけは音もなく静まり返りひっそりとしているのに、この充満する感じは何だろう?ともる蝋燭のせいか、そこは少し暖かいような空間で、まるで蝋燭の燃える音までしんしんと聞こえてくるかのような静けさです。燃える炎に思わず見入ってしまいます。 周りに目をやるとたくさんの棚があって、ぎっしりと小さな壷が並んでいます。この壷には信仰する人の清浄髪が納められているという説明書きが掲げられていました。私が感じた充満する感じは、この納められたたくさんの壷に込められた人々の想いから来ていたのかもしれません。

奥の院階段を上がり、また外の光の中に出ました。これからいよいよ奥の院へ向かいます。途中には鞍馬の文化財や鞍馬山の自然を紹介し展示する霊宝殿(鞍馬山博物館)もあります。歩いていくうちに道の脇に”義経息次ぎの水”という表示に出会いました。「800余年後の今も湧き続けている」という表示がありましたが、湧き出口の近くに「高温少雨の故でしょうか 残念ながら現在お水は流れておりません」と別な札がかけられていました。近年、地球規模で起こっている異常気象の影響が、こんなところにも現われているのでしょうか…。

進むうちに辺りはいちだんと山深くなり、聞こえるのは木々の間を抜ける風の音と鳥達の声だけになりました。木漏れ日の下を行くと、小さいキツツキが幹を叩く音やカラ類が林の中を渡っていく声も聞こえてきます。この辺りは”木の根道”と呼ばれ、山道の表面に杉の根がうねうねと走っています。鞍馬天狗がその辺からこちらを見ていても何の不思議もないような山深さです。自然の声に耳を傾けながら歩くうちに、まるで街の喧騒の中では閉じていた感覚が少しずつ生き返ってくるようです。こういった山々が古くから修験の場として選ばれてきたのも理解できる気がしました。

林の中に魔王殿はありました。訪れたのは3月上旬で
魔王殿したが、お清めの水をいただくひしゃくには、なんとつららが出来ていました。お堂の先にある柵内の場が磐座(いわくら)と呼ばれ、太古に神が降臨してきた場所として崇拝されてきたのだといいます。手前のお堂の中には幾つか長椅子が置かれてあり、私もそこに座ってしばらく辺りの空気を感じ味わいました。

魔王殿を後にして林の中の小道を更に行きます。そのうちに下の方から川の音が聞こえてくると、もう貴船も間近です。西門を抜けるともはやそこは外の世界に降りてきたという感じで、貴船川沿いに料理旅館などが軒を連ねています。(夏は脇を流れる貴船川の岸辺で、川床料理も楽しめるということです。) 

貴船神社川沿いに上に行くと、一番奥にひっそりとした貴船神社奥の宮があって、その途中には縁結びの神社といわれる結社や、参道両脇に赤い灯籠がぎっしり立ち並ぶ貴船神社があります。貴船神社では水占みくじというお御籤を求めることもできます。ここから30分ほどのんびり歩くと、叡山電鉄の貴船口駅に至ります。(3月下旬~11月末まではバスも利用できるとのこと) 鞍馬から奥の院を経由して貴船に出るこの道筋は、登り下りも多く行程も長いですが、時間の取れる日に半日以上みて、ゆったり心を落ち着けて一巡りしたい参道です。

鞍馬の年中行事: 有名なものは5月の満月の夕べに行なわれるウエサク(五月満月)祭、10月下旬に山内の由岐神社で行なわれる鞍馬の火祭など。他にも四季を通じて数々の年中行事が行なわれている。

(取材・文 テジマアキ)

鞍馬から奥の院を経て貴船へ(京都)

アクセス:出町柳駅-(叡山電鉄鞍馬線30分)→鞍馬駅-(徒歩約30分)→本殿金堂-(徒歩約30分)→奥ノ院魔王殿-(徒歩約10分)→鞍馬寺西門-(徒歩約15分)→貴船神社奥ノ宮-(徒歩約12分)→貴船神社-(徒歩約30分)→貴船口駅-(叡山電鉄鞍馬線27分)→出町柳駅
注意:奥の院を廻る場合は丈夫な歩きやすい靴で!

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